2011年05月19日

「津波の洗礼を受けた聖書」 NHK番組紹介

  (耳よりの情報です)

ケセン語福音書の山浦さん
        出版社の熊谷さん NHKTV「心の時代」に
                              荘内教会牧師 矢澤 俊彦

みなさんご存知の山浦さん、大船渡の医師で、10年近く前、福音書をケセン語に訳出、出版した方です。幸い津波の難をのがれ、お元気です。
 その出版を手がけたEPIX出版社は、大船渡の海岸近くにあったため社屋はすべて潰されてしまいました。それにもめげず、社長の熊谷雅也さんは再起しようと懸命です。
 この様子をNHKテレビが捉え、以下のように「心の時代」で放映する予定ですので、ご紹介いたします。友人その他にもお知らせいただくとありがたいです。           

 ★ 5月22日(日)午前5~6時 NHK教育テビ
 ★ 5月28日(土)午後1~2時 教育テレビ 再放送



(以下は「河北新報」 5月5日号 からの転載記事)

出版社経営 熊谷 雅也さん(58)=大船渡
―ふんばる 3・11大震災―
故郷の文化 次世代へ
―活字の灯 決して消さぬー

「大船渡は、自分が生まれた街。故郷の文化を本にして次の世代へ残していくのは、われわれにしかできないんだ」
大船渡市の出版社「イー・ピックス」。社長の熊谷雅也さん(58)は、4月上旬に移った同市大船渡町馬越の高台の新社屋で再起を誓った。
港近くの街中にあった元の社屋は、3月11日の大津波で流された。鉄骨造りの出版物倉庫は残ったものの、中にあった本5000~6000冊のほとんどが潮に漬かった。

三陸の海の魅力を紹介した本、大船渡など気仙地方で盛んだった採金の歴史などをつづった本。どのページをめくっても地域の文化が薫り立つ。
手塩にかけた「財産」が光を失っていくように見えた。しかし、不思議と悔しさはなかった。
「一度に全部をなくしてしまったからかもしれない。それに家族や社員は無事だったし、多くの人から励ましを受けた」
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1979年に市内で印刷会社を創業し、2001年、出版に乗り出した。地元には自費出版を請け負う印刷会社はあるが、出版社はなかった。
うずもれた文化を掘り起こし「21世紀のグーテンベルク」になりたいと社の標語に掲げた。世界で初めて本を印刷した偉人が、熊谷さんと社員3人の目標だ。
計約1万部を売ったロングセラーがある。「ケセン語訳 新約聖書」全4巻。市内に住む山浦玄嗣医師が気仙地方の方言(ケセン語)に翻訳した聖書で、02年から04年にかけて刊行した。

震災後、この本が話題を呼んでいる。「大津波の洗礼を受けた聖書」として、全国各地のキリスト教関係施設などから注目を浴びているらしい。
「何が起こるか分からない。誰かどこかで、大船渡発の文化を求めている。」つぶれかけた倉庫にたたずみながら、ふとやる気がわいてきた。
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今は倉庫の中で、販売できそうな本を探している。ぬれた本を手に取り、パラパラとめくっていく。根気の要る仕事だ。
「乾かせば読める本もある。そういう本は少しでも救い上げ、読者の手元に届けたい」と言う。

新社屋は、自宅の敷地内に建てた。プレハブの簡素な小屋のようだ。だが、パソコンや簡易印刷機があって、何だってできるような気がする。
ただ、経営に対する気構えというか、心構えが以前とは違う。
「震災前は中小企業の経営者として、不景気の中でどうしようと、心配ばかりしてきた。」でも今は、生きている幸せを痛感し『今日もいい日だった』と、毎日が大切に思えるようになった」
震災後初となる本を、5月末か6月上旬には出版できそうだ。県外の人が原稿を持ち込んだ企画ものだ。「今後1年ぐらいで4、5冊は出版できる。会社の行く末を心配してくれた多くの人の期待に応えていきたい」
がれきの街の向こうに出版文化の灯はともっている。


山浦さんからのご連絡

NHK教育テレビ「こころの時代 ~宗教・人生~」で、「私にとっての 3・11」シリーズの一つとして、わたくしやカトリック大船渡教会の仲間の出演する「ようがす、引ぎ受げだ」という1時間番組 が放映されます。津波の災害を前にして聖書をどう読むかという問題を提示され、わたくしなりに考えたことを述べました。イーピックスの熊 谷雅也くんも出演し、津波の洗礼を受けたケセン語訳聖書のことなども 「お水潜りの聖書」として話題に出ます。録画はちょうど聖週間で、カ トリック大船渡教会の聖金曜日、聖土曜日の復活徹夜祭(当日は大嵐で した)、復活祭のミサも収録されました。

大船渡教会では5人の信者が亡くなり、約20家族(まだ正 確な数字が確認できないままです)が家を流されました。教会の建って いる丘は激浪に削られ、車庫や納骨堂が根こそぎ波にさらわれて破壊さ れました。
わたくしども大船渡教会の仲間にとり、「こころの時代」への出演は 2002年に「ケセン語で読む聖書」、2004年に「ヨハネからのたよ り―ケセン語訳聖書の世界―」に続く3回目となります。




Posted by 矢沢牧師 at 18:34