2008年08月11日

新旧二つの精神の相克が底流に

   『宣教物語を読んで』 
     郷土の精神史語る大書  難波 次郎
     (山形新聞 8月2日「郷土の本」欄) 

★ 日本海を望む城下町鶴岡市に荘内教会がある。保守の色濃く、伝統のある小さな町の歴史の中で、キリストの光を掲げてきた先人達がいたということは異色とも思える。だが郷土の精神史の中で決して見逃すことのできない事実である。
★ この書は教団史の質と範囲をはるかに超越して、時の庄内人がどのような考えをもっていたかを語る「庄内の精神史」と言えよう。
★ ・・・・本書は、庄内津々浦々の有名・無名の人たちが、日常どう生き、どういう価値観を持っていたかをわれわれの目の前に表してくれたのである。
 明治から昭和初期の新しい時代や敗戦を迎える前の混迷の時代にあって、多くの先人たちは、精神的な高潔さを求めることを生きることの第一義としていた。それぞれの時代に感じていたことを生き生きと語った先人たちの言葉がこの書に鮮明に残されている。
★ この九百ページにも及ぶ大書の中から庄内らしい二つの精神性をめぐる出来事に注目してみた。・・ ・・・・研堂・幸吉父子に関する資料は、本書に多く掲載されている。時代の流れを象徴する例といえる。
★ 編者(著者)矢澤俊彦牧師の二十年間に及ぶ編集・著述にはただただ敬服のほかはない。その労苦はいかほどであったか。また、鶴岡市の洋画家三浦恒き氏の挿絵は、重厚な本書の中で清涼の感が多くあって、読者を助けてくれる。          



Posted by 矢沢牧師 at 13:23