2008年10月01日

土地の香りを漂わす超教派的な精神史

  土地の香りを漂わす超教派的な精神史
         ―『鶴岡の宣教物語』について ⑩―  
                新井 明 (新発田市 敬和大学学長)
★(前略)・・・・大著である。が、ページを開けると、先へ進むのが止められなかった。前巻が物語編、後巻が資料編なのだが、この両者がよく溶け合っている。ところどころに貴重な写真、また挿絵がはいる。1622年(元和8)にイエズス会士による伝道と、また迫害のあったことを、わたしは初めて知った。
★ 全体は教会史にありがちの教派中心の歴史ではなく、莊内に生きた、いや莊内を生かしてきたキリスト教信仰の生々しい痕跡が息づいている。日本キリスト教史に名をとどめている方がた――たとえば川合信水――が出るかと思えば、ほぼ無名の信徒たちの活動も記載されている。・・・わたしにとって、とくに嬉しいのは小川永水牧師とそのご一家のことが、かなり詳しく叙述されていることだ。また、カトリック教に関する貴重な記述もあれば、無教会者にかかわるページも相当な部分をしめる。 とくに黒崎幸吉は詳しい。諏訪熊太郎にも触れられる。・・つまり全体は莊内とその周辺に関るその土地の香りを漂わす超教派的な精神史となっているのだ(中略)。
★ 矢澤牧師の表現をかりれば、キリスト教は「文明の育ての親」であり、その親の庇護のもとでこそ日本も」「精神的に大いなる国家となっていく」(序文)。世界はひとつ「家」、「散り散りの羊」の集うべき「家」oikoumene なのだ。そうだ、この大著は真のクリスチャン愛国者・矢澤俊彦牧師の生涯をかけたエキュメニズム(全教主義)の信仰告白であった。そしてこの「牧人」のまわりで、その牧者の務めを長年にわたり支えた多くの方がたのおられたことを想起し、心からの敬意と感謝を捧げたい。




Posted by 矢沢牧師 at 23:42